害虫と益虫

梅雨入りしたというのに、よいお天気が続いています。雨ばかりの梅雨も仕事ははかどらないし、いろいろ不都合なことがあるのですが、農業にとってより本質的には雨が降ってくれない方が困るのだな、と思いしらされています。もうこの先どんなに大雨が降ろうと決してお天気に文句はいいませんから…。
「降れば病気、照れば虫」なんて言い方があります。雨の多いときは作物に病気が多く、日照りが続くと虫が多く発生すると言う意味です。どっちにころんでもいいことのない、みもフタもない言い方ですが、基本的にはこのとおりです。今年は今のところ日照り年なのでうちの畑にもアブラムシ、それからキャベツやブロッコリーが大好きなアオムシ、コナガの幼虫、ヨトウムシなどの害虫がやや多いようです。
虫を害虫、益虫と分けるのは、まことに人間の勝手とは思うのですが、畑や田んぼではどうしても植物を食べる、ベジタリアンの虫が害虫、他の虫を食べる肉食の虫が益虫(天敵)となってしまうのです。虫を観察することによる減農薬運をはじめた宇根豊さんによると、害虫、益虫の他に「ただの虫」というのがいるそうです。例えば、田んぼには600種くらいの虫が住んでいるそうですが、害虫あるいは益虫とよばれているのはその10パーセント以下で、後は直接作物に害もしなければ、益もない、人間から見ればいわゆるただの虫だそうです。しかし、このただの虫が益虫のエサになったり、有機物を分解したり、自然のサイクルの中で目には見えなくても大きな役割を持っている、というお話でした。今、「絶滅危惧種」などとよばれる生物が確実に増えているようですが、おそらく生物の種類が多ければ多いほど、人知の及ばないバランスにより、環境は安定するのでしょう。
畑の上空を自在に乱舞して虫を捕まえているツバメの群れ。思わず見とれながら歩いていると、大きなシマヘビとばったり鉢合わせする。田んぼのあぜには、今しっぽが取れたばかりの小さなカエルが無数にはねまわっている(ヤマアカガエルか?)。
水中に目をこらせば、そこには小さな生き物が満ちあふれている。多くの生き物に囲まれているという感覚…それは一種の幸福感です。
イネとウキクサ
次第に増え、ついに全面ウキクサにおおわれた田んぼ。光をさえぎり、水温が上がらないと嫌われるのだが、逆にそのことにより雑草を抑えたり、また水を浄化する働きもあるという

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農業は楽しい!

ごぶさたいたしました。半年ぶりですね。久しぶりすぎて何だか照れくさいです。
やっと野菜のお届け開始となりました。本当はもう少し早くお届けしたかったのですが、このところやや気温が低かったせいか、野菜も今のところゆっくりとそだっているようです。今年はどんな天候になるのやら、そればかりは誰にもわかりませんが、今年もうちの野菜をどうぞよろしくお願いします。
さて、ほそかわ農園は今年で10年目のシーズンになります。10年やってみてあらためて思うこと、それは「農業は楽しい!」ということ。体を動かし、作物を育て、そして育ってゆくのをながめ、収穫し、いただく…。毎年同じことの繰り返しですが、なぜかちっともあきません。かなりおめでたい人間のようです。そして、うちの野菜が食べたいという方に食べていただけるのはありがたいことです。自分がおいしいと思うものをおいしいと思ってもらえる…有機野菜を作り続ける、ささやかなこだわりをわかってもらえる人に出会う、これはとっても幸せなことです。
また同時に農業の奥深さも感じます。トラクターで草一本ないようきれいに耕し、そこで何か一種類だけ作物を育てるというのは、自然からみればとても不安定な状態です。自然にまかせて放っておけば、安定はしても畑にはならない。そのバランスが難しい。植物を相手に思うようにコントロールするのは、本当に難しいです。
今年新しく作っている作物。だいぶ前にキビを作っていたことがありました。今年また雑穀を作ってみたくなり、キビとアワの種をまきました。アワを作るのは初めてなので、どんなものか楽しみです。緑色の大豆、いわゆる「ひたし豆」も少しまきました。それから「高山インゲン」と言う白いインゲン豆、煮豆にするとネットリとしておいしいのですが、これを皆さんに食べていただこうと思い、たくさんまきました。また、ミニトマトを減らして、ミディアムトマトというのを育てています。ゴルフボールくらいのトマトでおいしいそうです。どんなのができるでしょうか。「万願寺甘とう(京野菜でシシトウの大きいの)」もまた作っています。それからパプリカは以前作っていた小さい品種に戻し、赤いのと黄色いのを作っています。ゴボウはここのところもう何年もうまくできたためしがなかったのですが、今年は耕土が深くうまくゆきそうな畑を借りることができたので、種をまきました。太くて柔らかい「下仁田ネギ」も植えました。他にも好奇心にかられて試作しているものが、実はいろいろあります。そしてさらに気持ちのよい季節のせいでしょうか。どこかに出かけるたびに花の苗や種、果樹の苗など、ついつい買い込んでしまい、いったいどこに植えようかと草だらけの庭をながめるこのごろです。

写真:大麦の穂

伊那谷の方に少量の大麦でも押し麦にしてくれる小さい製粉所があると教えてもらい、今年初めて作ってみました。かなり大量に取れそうなのですが、他にはどんな利用法があるのだろうか?

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今年もお世話になりました

野菜セットのお届けは12月で終わりです。今年も、ほそかわ農園の野菜をたくさん食べていただきありがとうございました。1シーズン食べていただいた野菜をひとまとめにしたら巨大な山になるのではないでしょうか。野菜セットはまた来年の6月から始まります。それまで長いお休みになります。一年中とはいわなくても、もう少し長い間みなさんに野菜をお届けできたらよいなと思うのですが、このあたりは冬の寒さが厳しくなかなかむずかしいです。根菜類などは比較的貯蔵しやすいのですが、青物がとぼしくなってしまいます。わが家では白菜、キャベツも貯蔵して冬中食べるのですが、どうしても鮮度が悪くなってしまいます。でも、冬を越して3月ごろのカボチャ、ジャガイモは今よりさらに糖度が増して信じられないほど甘くなるんすよ。
この季節になると「冬は何するだ?」と聞かれることが多い。これは何のアルバイトをするのか?という意味です。ここらのお百姓は昔から、冬は農業以外の何らかの仕事をして生計を立ててきたわけです。今でも農家の多くは、大規模にやってかなり農業収入の多い人でも、冬のアルバイトをしています。特に昔かたぎの人は、たとえお金は十分にあっても、何もしないでブラブラしているのが何よりつらいようです。うちの場合、お金はないのですが、今年も特にアルバイトをする予定はありません。ブラブラというわけではないですが、年が明けてからは、朝起きて「さて、今日は何をしようか」と考える生活です。とはいえ、ちょっとしたものおき小屋を作ったり、また例のごとくまきを運んだり、割ったりなどしていると、もう2月半ばからまた春の種まきが始まるのです。
冬の仕事で一番大事なのが、来春からの畑の計画をしっかりと立てておくことです!新年早々いろいろな種苗会社などのカタログを広げ、ストーブにあたりながら、あーでもない、こーでもないと考えるのはとても楽しい。見たことのない珍しい野菜ばかりお届けしてもどうかと思うのですが、まだ食べたことのないもの、とくにカタログに「大変おいしい、食味極上」なんて書いてあるとぜひとも作ってみたくなってしまう。ついついあれもこれもとタネを注文してしまい、畑に植えるときになって困ってしまう(これが計画と言えるのか?)。また、もっと自分に納得のゆく、よりよい作物を作っていく方法もはっきり見えてきた気がします。それは、今よりもっと太陽と植物と微生物の力を有効に使うこと。緑肥であり、草生栽培であり、豆類や麦類をもっと取り入れてゆくこと、畑に持ち込むものをなるべく少なくしてゆくことでもあります。来年もうちの畑にご期待ください。どうぞよいお年をお迎え下さい。

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寒さに強い野菜

寒くなるにつれて畑にある野菜の種類は少なくなってくる。寒さに弱いものから一つずつなくなってしまうのだ。葉物野菜で最後に残るのはこの三種類。コマツナ、ホウレンソウ、ターサイだ。
コマツナは作りやすいといえばたいへん作りやすい野菜だ。タネをまけば、気候のよいときならば1ヶ月弱で「コマツナ」ができあがる。作業としては(1)タネまき、(2)収穫、という感じだ。しかし、生育期間が短い分、途中でどうこうすることはできない。例えば、トマトならばどの畑に作ったとしても、あげる肥料を吟味し、足りないようならばもう少しあげようかと、顔色をうかがいながら育てることもできる。しかしコマツナは、途中であまりよくないかも…と思ってももうどうしようもない。よい土でなければよいものができない。正直です…。土の味がそのまま出てしまう、という感じでしょうか。
ホウレンソウは、実は葉物の中ではもっとも作りにくい。肥料もたっぷりじゃないといやだし、酸性の土は大きらい、雨もきらい、とかなりわがままだ。ホウレンソウがよくできるようになれば、よい畑になったというくらいだ。うちでは最近は石灰の類もぜんぜん使わないようになった。ホウレンソウは特に大量の石灰を畑に入れないと育たないということになっている。かわりにカキガラ(牡蠣殻)の粉末を使用しているのだが、畑によってはうまくいかないことも多い。土作りもまだまだ半ばという感じです。
ターサイがこの3つのなかではもっとも寒さに強い。その秘密はこの形、緑のザブトンだ。初めて見た人は必ず驚いてくれる。この形をロゼットといいます。道端のタンポポなんかも冬はこんな形をしている。でも9月頃の姿はぜんぜん違う。ちょっと葉っぱが多いけどコマツナかなーという感じだ。寒くなるにつれ、次第に地面にはりついてくる。もっと寒くなると、あんまりぴったり地面にはりつこうとするせいか、チョキッと収穫すると、裏側に反り返ってしまうくらいだ。
これら3つとも寒ければ寒いほどおいしくなる野菜だ。今年の秋はずいぶん暖かかったので、まだまだこれから柔らかく甘くなってくれるはずです。

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田んぼのワラ集め

「豊作年は秋の長雨」と言うそうですが、何だか雨ばかりで、やっと田んぼのワラ集めが終わった。自分の田と近所の人の田から合わせて5反分(50a)くらいのワラを運ぶ。このうち半分は堆肥の置き場所にしている5セ(5a)ほどの畑に運びこむ。そして近所の酪農家から分けてもらった牛フン堆肥と混ぜて積み上げる。エゴマの実をとった後の茎、大豆を収穫した後の豆がらなんかもいっしょに混ぜてしまう。トラクターで切り返すたびにもうもうと湯気が上がる。今はうず高い山になっているが、半年もたてば何分の1かの量になる。これで堆肥の完成。来年には畑にまかれることになる。
 もう半分のワラはしきわら用だ。こちらはまず、田んぼに散らばっているワラ束を4つか5つずつ円すい状に立たせて、上のほうをワラでくくる。そのまま2週間くらい乾かす。乾いたら今度はひとかかえくらいに束ねる。それをワラ小屋に運びこむ。古い木造の、ワラを入れるための小屋があるのです。このワラは、来年畑でトマトやキュウリ、カボチャなど主に果菜類の株元や畝間に敷いてあげる。はだかの土より何か地面の上に敷いてある方が植物はうれしい。何ヶ月かすると、敷いたワラはすでに下のほうから腐り、分解し始めている。ミミズやいろんな虫も増えてくる。そして収穫が終われば、またトラクターで耕されて畑にすきこまれる。
 また、野菜の収穫・出荷のたびに、キャベツの外葉やネギの皮などの「ゴミ?」がコンテナ何ばいか出る。これらも堆肥置き場に運び込まれ、また別のひと山に積まれる。台所の生ゴミもいっしょだ。これも何度か切り返し、一年ほどたつとすっかり土みたいになる。こっちの方は田んぼに運ばれて、わが家で食べるお米にかわる。
今、紅葉も終わり、ハラハラと木の葉が散っている。全部落ちれば、今度は雪がふる前に落ち葉集めだ。くまででかき集めて軽トラに積み、運ぶ。わりとのどかな仕事
ですが、一週間ほどかかる。落ち葉は来年の春、ハウスの中で「踏みこみ温床」に使う。まずは発酵熱で野菜の苗を育ててもらうのだ。そのあと運び出し、またまた積み上げ、切り返す。二年たつとすっかりさらさらの土になる。今度はそれをポットに詰めて、ナスやトマトの苗を植えるのに使う。苗を定植すると、この土もいっしょに畑に入る。
農業というのは、化学肥料にたよらない有機農業では特にそうなのですが、こんなふうな炭素分の多い、ガサガサかさばるものをせっせと運んだり、積んだりする仕事
かもしれません。ワラや落ち葉がだんだん貴重な宝物のように思えてくるのが、われながらおかしいです。よく手入れされ、落ち葉のとりやすそうな山を見かけると「いいなー」とうらやましくなってしまうのです。

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ヤマトイモの話

寒くなってきました。それもそのはずで、いつのまにかもう11月です。いろいろあっても季節が巡るのだけは確実です。サツマイモを掘り、稲刈りをし、花豆や大豆など豆類も収穫が終わり、畑のほうもだいぶ片付いてきました。先週からヤマトイモを掘りはじめ、今ぼちぼちと掘りすすめているところです。今年はビニールマルチを張るのをやめて(なるべく使いたくはないのです)、畝の上にわらを敷くだけにしてみたのですが、何の畑なのかわからないくらい草だらけになってしまいました。やはりそれがよくなかったのでしょうか。今年のイモは残念ながらだいぶ小さめみたい。イモ掘りはまずその草を引き抜いて、次に手でイモの頭というか首というのかそのあたりを少し掘り、位置を確認します。それからスコップでまわりから掘りすすめ、準備オーケーと引き抜こうとすると、さわるかさわらないかのうちに「ポロリ」と小さいのしかとれないこともしばしば。おかげでほるのは楽なのですが…。
ヤマトイモはヤマイモの仲間です。長イモより水分が少なくてねばりが強く、色も白くて上品な感じです。長イモの方は、野性的というか、あの口のまわりや手がかゆくなる成分が多い。その分特有のうまみも多い気がします。ほそかわ農園でも以前は長イモとヤマトイモの両方を作っていたのですが、今はヤマトイモだけです。長いもは専用の機械なしには掘るのがとても大変なのと、このあたりは石も多くて耕土も浅く、深くて柔らかい長イモに適した畑がなかなかないのです。とはいえ、かたい土を押しのけて苦労して大きくなったイモの方が、形は悪くてもねばりが強くおいしそうです。
これから日ごとに寒くなってゆきます。今は朝霜がおりる日とおりない日があります。じきに毎朝真っ白に霜がおりるようになり、最低気温がマイナスになります。次第に畑の土も凍ってきます。大根や人参、キャベツ、白菜なども貯蔵しなくてはいけません。貯蔵は土にうめるか、ムロに入れるかなのですが、これはいわば天然の冷蔵庫ないしは保温庫なので、あまり早く入れすぎてもいけません。暖かすぎて傷んでしまいます。そうかといって畑でカチカチに凍ってしまってはもちろんいけません。もうしばらくは、天気予報でこの秋もっとも強い寒気が来た、なんていわれるとちょっとドキッとするのです。

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お米の収穫

わが家は自給用に2反(20a)ほど田んぼを作っている。長雨が続き、手間取りましたが、どうにか稲刈りも終わりそうだ。「へー秋はおわったかい?」なんて聞いてくるお年よりもいる。「もう稲刈りは終わったのか?」という意味だ。お米を作っているお百姓にとって、秋イコール稲刈りというわけだ。
うちでは大量の米を食べている。今、日本人はひとり平均1年間に60キロくらいの米を食べているらしい。我が家では1日約1キロ、単純計算で1年365キロ!もたべているらしい。ほんとですか?といいたくなります。わが家といっても大人2人と幼児2人だけだ。父母の分はまた別計算なのだ。うちはアトピー・アレルギー一家なので、たんぱく質や油分の摂取にいろいろ不自由がある。好むと好まざるにかかわらず、数十年前の日本の食事に近いものになっているようなのだ。それから作っている本人もそうなのだが、お米はタダと思っているフシがある。確かにお米代という形でお金がでてゆくことはないが、労力はたっぷりかかっているのだが…。
お米は土蔵にしまっておく。土壁の昔ながらの土蔵だ。中にブンコといって、お米を入れておくための小さな部屋がある。秋、そこにモミのまま一年分の米を蓄える。食べているお米がなくなると、そこから出してきて、精米機でもみすりし、精米して食べる。去年は冷夏でいつもの年の半分くらいしかお米が取れなかった。さいわいおととしたくさん取れたので、一年の半分くらいおととしの米を食べていた。いわゆる古米だ。今、土蔵の中にはモミで50キロくらい残っている。なんとか一年間食いつなげたわけだ。昔なら、土蔵に米がなくなったらそれこそ大変なことだろうが、今なんか気楽なものです。お店に行けばいくらでも売っている。しかも自分で作る労力を考えると、買ったほうが安いくらいなのだ。
今、日本の田んぼは半分くらいが転作で、米以外のものが植えられているか、あるいは利用されていない状態だ。うちの近所でも半分くらいの田はあそんでいる。それでも残りの半分ではみんなせっせと米を作っている。村には専業農家の人はほとんどいない。会社に勤めるかたわら、休みの日を使って田植え、稲刈り、土手草刈と結構忙しそうだ。「大変そうだな。お米なんて買ったほうが安いのに」と以前は思っていたのだが、自分でやってみると米作りって楽しい。本当です。春、一番最初に田んぼに水を入れるときはワクワクする。そして何年か作っているうちに、田んぼというところが、うまく説明できないけれど、何か特別な場所に思えてきた。世の中がどうなろうとせっせとお米作りを続けるお年よりの気持ちが、少しだけわかるような気がするのです。そう、今年は誰か上手な人に教わって、うちの田んぼのワラでお正月の「しめなわ」を作ってみたいな、と思っています。

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ねぎの話

ねぎは中国が原産地だそうですが、中国といっても広いです。もともとはどんなところに生えていたものなのか、一度見てみたいと思うのです。ねぎは寒さに強く、暑いのはきらいですが、そのわりによく耐えて、乾燥にも強い作物です。今は畑から収
穫していますが、12月のはじめ頃、畑が凍りつく前には全部抜き取って、一隅にまとめて、また土に伏せておきます。上にわら束などをのせて、多少の保温をほどこしてあげます。ここから皆さんにお届けしたり、また冬中わが家で食べるのです。しかし、これを例えば玄関先になどにひと冬ころがしておいたとしても、マイナス20度近い寒さに耐えて春にはまた青々とした芽を伸ばしてくる、そういう生命力の持ち主です。この信州の高冷地で冬の食べ物として昔から大事にされてきたわけです。今でも家庭菜園の基本は、ねぎとジャガイモという感じ。これだけはみんなきっちりと作っています。その一方、ねぎは大きくなるのは遅いのです。9月のはじめ、まだねぎの出荷が始まったばかりなのに、もう来年用の種まきをしなくてはなりません。今、5センチくらいにのびて、ちょうどつまようじのような姿をしています。これから約一年かけて大きくなるのです。そして草には弱く、種まきしてから収穫まで何回となく草取りをしないと草に負けてしまいます。うっかり草だらけにしておくと、ちっとも大きくならないし、とけてなくなってしまうこともあります。このあたりで作っているのはいわゆる根深ネギなので、後半は土寄せといって根元に土を盛り上げてゆきます。
さて、今年のねぎは思いのほか太くなりました。春植えたとき、株元にわらをしいたのがよかったのでしょうか。「よしよし…」と喜んでいました。8月の終わり頃、追肥をしたくなりました。もともとねぎは肥料にあたりやすい作物なので、少しずつ、少しずつ追肥をしながら育てるものなのですが、いつもの年に比べてもう十分大きくなったしどうしようかと迷いました。アブラムシがこわいのです。でももう少しだけあげれば、もう少し大きくなるかも…。結局、追肥をしました。少し肥料をあげたわけです。すると、アブラムシがつきました。「しまった…」。アブラムシはだいたいにおいて、肥料が多すぎるときに発生します。そして、またねぎはアブラムシにとっても弱いのです。今、広がらないようせっせと手でとったりしていますが、これがなかなかたいへんです。無農薬の場合、病気や虫が出ないようそだててゆくのが基本で、もしでてしまうと対応が難しいのです。欲張りじいさんが結局損をするという、何だかどこかで聞いたことのあるお話になってしまいました。
作物は肥料が多すぎても、少なすぎてもうまく育ちません。そして土自体が肥えていて、肥料にたまる分がより少ないほうが、作物は安定して健康に育ってくれます。本当に土が基本です。フカフカのよい土って、手でさわってもとっても気持ちがよいんですよ。

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大収穫の秋豆と枝豆

近所でもそろそろ稲刈りが始まったようです。スポーツの秋といいますが、ほんと体を動かすのがとっても気持ちよい季節になりました。快適に農作業を行っております。今の作業は…ジャガイモをようやく掘り終わったので、今度はサツマイモ掘り、稲刈りなど収穫関係です。それから、小麦や葉物類、ニンニクなどの種まき。そして、空いた畑には堆肥をまいたり、えん麦やライ麦を緑肥としてまいたり、これはもう来年の準備です。
さて、畑の野菜のほうは、ちょうど夏と秋の中間です。ちょっと中途半端といえばそんな感じもします。あれだけ取れていた夏野菜がめっきり少なくなってしまいました。トマト、ナス、ピーマンなど、気温が下がりゆっくりと大きくなるせいか、だんだんかたくなってきます。トマトもだいぶ皮がかたくなりました。ピーマンも小さめで収穫していかないと、かたくなります。それから秋は、「実がいる」といいますが、いろんな種がふくらんで種として充実してきます。土手の草なども夏は十分に大きく
なってから実をつけるのですが、秋になるとこんな小さな草までが、いっしょうけんめい小さな実をつけようとします。いそがないと、これからどんどん寒くなってゆくことを知っているのです。畑のシシトウも中の種がかたくなってきたので、とるのをやめました。
今年は作物はまあよくできた方ですが、失敗したものもあります。秋にお届けするはずだったブロッコリーは種まきに失敗してまったくなくなってしまいました。ブロッコリーは秋のものがもっともおいしいし、また虫も比較的少なく(無農薬で作るにはこれが大事!)、きれいにできるので残念です。それからレタス類もうまく行かず、春に少しお届けしただけになってしまいました。ジャガイモもよくありませんでした。肌目が悪いし、小さくて皮をむくのが大変かもしれません。
失敗の原因はいろいろですが、例えばレタスなら、レタスの性質をよくわかっていないから、うまくゆかないということもあります。何年かの試行錯誤の末にやっとこうすればよいのか、とわかることもあります。うまくゆかないものは、きっと私の理解が足りないのだろうと思うのですが、なかなかわかりません…野菜の気持ち。
これから寒くなってくると、秋や冬の野菜はだんだんおいしくなってきます。ホウレンソウ、コマツナ白菜、ねぎ…。特にねぎなどは寒くなればなるほどトロリと柔らかく甘くなってゆきます。ジャガイモやサツマイモ、かぼちゃなどは全部収穫して貯蔵しておくのですが、これらも時間がたつと、次第に甘くおいしくなってきます。ご期待ください。

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大豆と枝豆

めっきりすずしくなってしまった。こうなるとキュウリやトマトの夏野菜は、ガクッと取れなくなってしまう。これからは冬に向けて日に日に気温が下がってゆくばかりと思うと、何か寂しい感じがしてしまう。とはいえ、これからイモや豆、そしてお米が収穫をむかえる。みのりの秋だ。
今日は大豆について…。大豆は1反(10a)くらい作っています。大豆はこのあたりでは5月下旬に種をまく。種は去年収穫した大豆の中から悪い豆をよけて使う。豆類は「自家受粉」といって他の種類のものと混ざりにくいので、種とりがしやすい。種まきすると、まずは鳥(ハトとキジ!)対策だ。大豆は豆自体が根っこに持ち上げられて、地面から出てきてぱかっと開き、最初の双葉になる。鳥はこの発芽したての大豆が大好きだ。畝(うね)にそって歩きながら、このもやしの頭の部分だけちぎって食べてしまう。大豆をまいてから、しばらくは毎朝畑に行き、ちょっとでも芽が出ていれば、足で少し土をかけて隠さなければならない。しばらくして、双葉が開ききってしまうと、もう鳥は見向きもしない。次にやってくるのがシカ。シカも大豆が大好き。茂った葉っぱを垣根を刈り込むように食べてくれる。大豆は葉っぱもおいしいんでしょうか。食べて見たくなります。それから除草。機械(管理機)で2回くらい土寄せしたあと、どうしても1回は手で取らなくてはならない。草が小さいうちにやりさえすれば、そんなに大変ではないのだが…。収穫は、すっかり枯れて、手に持ってふるとカラカラとさやの中で音がするようになればOKだ。鎌か草刈機で刈ってしばらく干し、そしてわが家では、いまだに棒でたたいて脱穀する!昔から使っている専用の棒があるのです。最後に手回しの唐みで選別すれば完了だ。
この大豆作りの労力を金銭に換算するととってもキビシイものがある。日本の大豆の自給率が低いのも当然といえば当然だ。このあたりでも少なくなってしまったが、たまに自給用とおぼしき小さな大豆畑を見かけると仲間意識というか、ちょっとうれしいのです。秋には皆さんに大豆をお届けしたいと思います。わが家でも普段大豆を煮て食べるということはあまりありませんが、たまに食べるとあらためて豆っておいしいなと思う。味噌やしょうゆがおいしいのも大豆がおいしいからなんだなーと思うのです。
大豆と枝豆って同じなんですか?と聞かれることがあります。まったく同じ植物なのですが、品種が違います。枝豆は大豆を若取りしたもので、枝豆もそのまま畑に置いておけば大豆になるのですが、枝豆用のものは早くできるように品種改良されたもので、大豆用はたくさん豆が取れるようにつくられたものです。大豆用のは大きく育ってたくさん実をつけるので、その分取れるのが遅くなります。ほそかわ農園でもこれから、大豆用の品種の枝豆、黒豆の枝豆が出てきます。涼しくなってしまってビールのおつまみという感じではなくなってしまったけれど、とってもおいしいですよ。甘みが落ちてしまいますので、届いたらできるだけ早くお召し上がりください。

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