10月にはいると、もはや畑に種まきするものはない。あ、「ライ麦」というのがある。これはライ麦を食べるためのものではなく、越冬緑肥としてまくものだ。ライ麦は緑肥として使う作物の中で、最も寒さに強い。寒さに耐えて少しずつ育ち、冬から春先の弱い太陽の光を、緑の葉っぱや根っことして有機物にかえてくれる。太陽の光をムダなく肥料にかえてくれるのだ。それから根っこが土をフカフカしっとりにしてくれるし(団粒化といいます)、土中の微生物のエサになったりして生物性を豊かにしてくれる。また冬の強い北風で、表土が吹き飛ばされるのを防いでくれる。畑が裸になっているとかなりの量の土が飛ばされてしまうらしい。おまけにライ麦やエン麦はアレロパシーという作用が強く、次作の雑草をかなり抑えてくれるのだ。ほんとにいいことばかりだ。
つねづね「もったいない」、あるいは「けち」という言葉は、農業のキーワードだと思っている。自分で作った食べ物は大切にいただくようになる。「ご飯はひとつぶなしに食えよう」というばあちゃんのコトバをよく思い出す。また野菜くずや残さも堆肥となり、すべてまた土にかえってゆく。そしてこの「もったいない病」は、なぜか次第に進行してゆく。なるべくムダなエネルギーや、物や、ついでにお金も使わないようにと、農業を続けるほど、何だかより「けち」になってゆくようなのだ。とにかく、冬にまわりが全部土色の中で、うちの畑だけ元気に緑色をしているのを見る
と、得してる!というか気持ちよいのだ。
さて、このライ麦の種まきも終わると、本当にもう畑に種まきするものはない。春先から半年間、天気を気にしながらひっきりなしに何かの種まきをしているので、種まきがなくなるとだいぶほっとするし、少しさみしい気もする。頭の中にはもう来年の計画があれこれ浮かんでくる。
写真:にんじんの花
雨の中、にんじんの収穫をしていると、いろんな虫が雨やどりをしていた。赤トンボ、シジミチョウ、ハナムグリ、カマキリ、シャクトリムシ…どれも逃げようとしない。季節を間違えて咲いてしまったにんじんの花もきれいだ。