田畑の仲間たち

cimg2472.jpg○昔から言い伝えられている生物暦がある。カッコウが鳴いたら豆(大豆)を播けとか、ノダフジが咲いたらもう絶対遅霜はこないとか、うちのばあちゃんも、そんなような事を言っていました。百姓の仕事は、一言で言えば、その季節にあった種を次々と播くこと。だから、梅が咲くから始まり初雪に至る自然のリズムと、生活のリズムがぴったりと重なってくる。
○例えば土手に咲くなにげない野の花。カンゾウ、アヤメ、アザミ、アマドコロ、ツユクサ、トラノオ、ナツズイセン。毎年同じ所に出てきてくれるので、ああ今年も咲いてくれたなとうれしくなる。ていねいに土手の草を刈りながら、花だけをのこしてゆくと、なんだか気分がよい。これが仕事におわれて慌てていると、ついばっさり切ってしまうこともある。今年は、アヤメがずい分増えて、畑にゆくたびに楽しませてくれた。ヒルガオやカラスノエンドウ、クズの花なんかもけっこうきれい、私は好きです。でもこいつらは草刈の時には、ばっさり刈ってしまいます。
○借りている田んぼの土手の3か所に、毎年スイセンが咲く。これは、以前この田んぼを作っていたおばあさんが植えたものなのだが、田んぼを4等分する位置に植えてある。春先、ちょうど肥料をまく時分に黄色い花を咲かせ、むらなく撒くための目印になってくれるのだそうだ。花もきれいだし、なかなか優雅な知恵ですね。
○田んぼや畑には、あまり歓迎したくないお客もやって来る。タヌキやイノシシ、とくに近頃シカが増えた。昼間から堂々と目の前に現れる。夜は畑中歩き回っておいしそうなものを探す。困ったものです。とはいえ、私にとって、田んぼや畑で仕事をする楽しみの何割かは、花や虫や野鳥や動物たち、作物以外のいろんな生き物と出会うことなのだ。