いのちのたべかた

 農家の私が言うのも変だが、「今食べている食べ物がどのように作られてきたか」知っているようで、実はよく知りませんでした。先日「いのちの食べかた」というドキュメンタリー映画のDVDを借りて観た。ヨーロッパの養鶏場、豚や牛の食肉加工場、パプリカを生産する巨大ハウスなど、食べ物を生産している現場、そこで黙々と働いている人々のシーンが次々に映し出されている。何の解説もなくてわかりづらいところもあるが、逆にいろんな想像力をかきたてられ、とても興味深い。
 例えば、養鶏場で大量のひよこがベルトコンベアーで運ばれ、次々と箱の中に落とされて詰め込まれる。また、体育館のような場所ですし詰め状態で育ったニワトリが、一羽ずつ機械に吸い込まれていって、コンベアーで運ばれ、次の瞬間には順々にお肉になってぶら下がっている。まるでアニメーションを見ているような、生き物ではなくて工業製品を生産しているかのようだ。一方で、牛の眉間に電気ショックのようなものを与えると蓄シーンは衝撃的で、思わず「牛肉食べてごめんなさい」と心の中で謝っていた。
 スーパーで、ニコニコ笑っている鶏や豚のイラストやパッケージングされたお肉を見ていると、命をいただくという感覚がすっかり麻痺させられてしまう。確かに野菜を作るのにも、たくさんのイモムシなどの害虫を殺してきたし、野菜だって逃げはしないけど命には変わりない。
 1年生の娘のクラスでは、給食を食べるときに「いのち、こころ、いただきます」と言っているそうだ。自分の命は、他のたくさんの命によって生かされているということを、あらためて気づかせてくれた映画でした。