みどりの親指

畑づくり、野菜づくりには作っている人の性格がよく出ます。長野県内で、同じく有機農業をしている人の畑を見学する機会が年に何回かあります。おおらかな人、あるいはおおざっぱな人、そして几帳面な人と畑の様子、作物の姿、野菜の味までおどろくほど違います。そして一種の才能でしょうか、英語で「Green thumb(みどりの親指)を持っている」と言って植物を育てるのが生まれつき上手な人と、なぜだかどうしても下手な人がいるような気がします。同じ生き物とは言っても、植物と人間とは生きてゆくリズムがまったく違うとつくづく感じます。もちろん、何もしゃべってはくれないし、いったいこの作物はもっと肥料がほしいのか、もういらないか、それとも他に何か気に入らないことがあるのが、「いったいどうしたいのだ!」と聞きたくなることがたびたびあります。

ついでに言いえば、お百姓は一人一人が経営者でもあるわけで、経営センスのある人とない人がやはりいます。一番もうけている人と、そうでない人では2ケタくらい収入が違うみたいです。ただし、どちらがより楽しそうに生活しているかは何ともいえません。それに、あまり経営者としてセンスのある人は、おそらく有機農業などしていないかもしれません。農業は基本的に、お日様と水と土がたよりの「スロー」な営みだからです。

さて、人のことはよく見えても自分のことはわからないものですが、ほそかわ農園の野菜はどうでしょうか。ひとつだけ私が人に勝てると思うのは、「人間は食い物が基本だ」という戦中派の人のような信念。そして野菜を食べるのが好きなこと。食い意地の強さです。おいしい品種があると聞けば、作ってみずにはいられません。そろそろズッキーニやキュウリなどの夏野菜が採れはじめます。だれより私が楽しみです。