2003年

今年もおせわになりました

百姓仕事は一段落して、農閑期となりつつあるのですが、なんとなく気ぜわしく感じます。ついこの間、春一番のタネまきをしたような気がするのですが、いつのまにか師走。月並みですが、あっという間というしかありません。子供の頃はそんなことはなかったのに、年をとってくるとどうしてこうも一年が早いのでしょうか。

作物を育てるための最も基本的なノウハウは、いつ(何月何日に)たねをまくかということです。タネまきは、ずれても3、4日くらいが限度で、一週間もずれると、もういけません。地方によってその時期は違ってくるので、最も参考になるのはずっとその土地で百姓をしている人、近くで畑仕事をしているおじいさんやおばあさんです。わが家の近所にもそれは上手に、美しく、小さな畑を作っているお年寄りが大勢います。とくになるべく多種類の野菜を、年間を通じて作ってゆくというほそかわ農園のやり方は、そんな昔ながらの自給自足的なお百姓さんのやり方ととっても似ているのです。そして、年間数十種類の作物を作っていると、毎年同じ時期にはほとんど同じ仕事をしています。タネをまけば、次は間引いたり、定植したり、そして草取り、草取り、草取り…。最後は収穫と、自動的にというか、作物に追われるように体を動かすという繰り返しです。より豊かな自然の恵みをいただくためには、自然の法則に従うしかないとは思うのですが。春の種まきから12月の野菜の貯蔵、漬物づくりまで、生活全体が、近所のお年寄に似てきた気がする今日このごろです。

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野菜の貯蔵

あちこちの家の庭先に、たくあん漬け用の大根が干してあるのが目につきます。我が家でも、ちょうど今干しているところです。1週間から10日干してから漬け込みます。夜は凍らないようにむしろをかけてやります。11月は平年よりずいぶん暖かかったですが、ようやく最近は朝方の気温がマイナス2、3度になってきました。大根などはこうなると、もう畑に置いておけません。先週全部とって、ムロ(土間にある地下室)にしまいました。次は人参、そして最後には白菜やキャベツもムロに貯蔵します。すでに収穫してあったジャガイモ、カボチャ、ヤマトイモなども順次ムロ入りです。なにせ我が家は築百数十年という古民家なので、土間に白菜などころがしておくと、春までコチコチに凍ったままなのです。それはそれで冷凍庫として利用できるのですが…。
野菜を貯蔵するのは手間がかかるし、葉物類などはどうしても傷んでくるのですが、いいこともあります。イモ類やカボチャなどはデンプンが次第に糖分に変わってゆきます。取ったばかりのものより、貯蔵しておいたもののほうが、甘くなるのです。春先の、芽がもじゃもじゃと伸びてシワシワのジャガイモは、甘すぎておかずには向かないくらいです。カボチャなどは2月くらいが貯蔵の限界で、次第に傷んでしまうのですが、その最後までうまく残ったカボチャが信じられないほど甘いです。

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雑穀

雑穀というのは、米、小麦以外の穀物、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギ、オオムギ、タカキビ、ゴマ、トンブリなどのことです。豆類まで含めて言うこともあります。ほそかわ農園でもかつてキビを作り、お正月にきび餅を作って野菜セットに入れてお届けしたこともありました。もち米にキビを3分の1混ぜて蒸かしてつくと、見た目もきれいな黄色い餅になります。とってもおいしかったのですが、だんだん野菜を食べてくださる方が増えるとともに餅つきが大変になり、やめてしまいました。トンブリも作ったことがあります。プチプチと不思議な食感のもので、よくできました
が、粒から食べられるようにするまでに、手間がかかります。また、ヒエを作ったこともあります。これは生後まもなくアトピーがひどかった息子に、正確には授乳中だった妻に食べさせるために作りました。半年間ほとんどヒエと野菜、海草、塩のみの食生活でした。ヒエご飯も思ったよりいけます。自然食品店から買う「ヒエ」があまりにも高価なので、それなら自分で作ってしまえ、と思ったワケです。しかし、どれが雑草でどれが作物か見分けがつかないし、数回の草取り、収穫となかなか楽ではありませんでした。(量は食べきれないほど取れました。)最近は雑穀がちょっとしたブームのようです。どれも作物自体はたいへん丈夫でやせ地でもよく育ってくれるのですが、収穫や調整など、作るのはけっこう手間がかかります。

さて、皆さんはエゴマというものをご存知でしょうか。当地では「アブラエ」と言い、東北や信州などの高冷地に適した雑穀の一種で、シソ科の作物です。最近では、このエゴマからしぼった油がα-リノレン酸を多く含み、健康に良いなどと、もてはやされているようですが、かなり古くから栽培されていた作物のようです。このあたりでは、他の雑穀を作っているのはほとんど見かけませんが、エゴマは今でも自家用に作っている人が多くいます。シソとそっくりな白い小さな花をつけ、その後小さな実をつけます。シソに似た独特の香りがあります。もちろん健康にもよいのでしょうが、エゴマのお餅とおはぎは特におすすめ。おはぎなんてあまり作らないでしょうか?でもとってもおいしいです。ぜひ作ってみてください。

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今年の小麦

小麦は秋、9月下旬~10月始めころにタネをまいて、翌年の6月下旬~7月初めに収穫します。その間はたいしてやることがないので、つくるのにわりと手間のかからない作物です。ただ、収穫の時期はちょうど梅雨で、しかも野菜の作業がピークなのでちよっとたいへんです。コンバインで刈ってゆくと、小麦の粒だけが脱穀され、大きな袋に詰められてゆきます。小麦は脱穀する時皮がとれてしまい、お米でいう玄米の状態になります。籾殻がないぶん、お米よりずっしりと重くなります。かついで運ぶのにあまりにも重いので量ってみると、何と40キロもありました。

今年は「東山31号」という小麦を作りました。これはうどんに適し、かつ寒冷地に適したものをということで、新しく作られた品種です。粉にして、うどんを打って食べてみると、確かにおいしい!モチモチしていて、かつコシのある食感がなんともいえません。パンを焼いてみても、去年のシラネコムギより膨らみ方がよく、グルテンも多いようです。

乾麺は昨年と同じ、栃木県の黒沢製麺所に作ってもらいました。昔は関東地方にはあちこちに小さな製麺所があったのですが、次々となくなってしまったようです。昔ながらの機械でゆっくりと粉を挽き、それを何度も圧縮して麺を作り、自然乾燥するという、手間ひまかけてじっくりと作ってくれる貴重な製麺所です。ふすまの部分も少し含まれているため、見た目は黒っぽいですが、小麦本来の甘みが出て、風味あるおいしいうどんに仕上がります。。

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秋野菜の言い訳

今年の秋の葉物類はできが悪い。何か所かの畑に分けて作付けしているので、畑によって多少違いはあるのだが、全体に肥料が足りない様子で顔色が悪い。たとえば、トマトなどはできる限り少ない肥料で育てたほうが、玉は小さくてもおいしくなってくれる。しかし、葉物は肥えた土でないとおいしくならない。ある程度肥料分がないと、どうしてもかたくなってしまう。小松菜などはタネをまけば、早ければ30日で収穫できる。作るのは簡単な気がするのですが、本当においしいものを作るのはなかなか難しいです。また、よい野菜ができるようになるまでには、時間がかかるものだなと、あらためて感じます。これは言い訳ですが…。

畑のほうは今年の役目を終えて、あとは片づけるだけというところが増えてきました。この片づけがどうもめんどうくさくて、ついつい後回しになってしまいます。しかし、ここががんばりどころ。早く片づけて、緑肥用のえん麦をまくのと、まかないのでは、来年の畑のできが違います。あとは、落ち葉を集めたり、堆肥を積んだり、ぼつぼつ来年の準備が始まっています。

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有機野菜の作りかた・売りかた

今、11から12月にとれる小松菜の種まき時期です。このあたりでは9月25日頃が種まきの限界で、それより遅くまいても今年中には大きくなりません。あとはニンニクと玉ねぎを植えれば、春からひっきりなしに続いてきた、植えもの・まきものもようやく一段落です。

ほそかわ農園ではいろんな種類の野菜を作って、皆さんに直接お届けしています。現在は約70世帯の方に食べていただいています。ロスを見越して多めに作付けするので、取れすぎた分は近くのスーパーの産直コーナーに置いています。また、今はやっていませんが、契約栽培という形で自然食品店に単品で出荷したこともあります。

同じ有機農業といっても、どんなふうに野菜を売るのかによって作り方まで変わってしまいます。たとえば、ホウレンソウやコマツナは冬の霜に当たると、甘くなり、栄養価もあがりますよね。でも、葉っぱは黄ばんで見た目は悪くなり、スーパーに出してもなかなか買ってもらえません。店頭ではそんな話を詳しく伝えることがむずかしいので、どうしても「味より見た目がすべて」というふうになってしまいます。契約栽培の場合は、決まった量を納期に出荷するということが最優先です。確かにひとつのものを大量に作れば効率が良いのも事実です。しかしそうすると、どうしても畑や作物に無理がかかってしまい、納得のいくような有機農業を続けていくことは困難になります。

たくさんの種類の野菜を作り、畑から直接おとどけする方法は、野菜にとっても畑にとっても最も理想的です。反面、セット野菜は好きなものだけ選べないし、あるときはどっさり、ないときは全然ない、と不便なことばかり。それでも、ほそかわ農園の野菜が食べたいという方に食べていただけ、私たちも農業を続けることができて、本当にありがたく思っています。

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収穫の秋

思いのほか厳しい残暑でしたが、朝夕はさすがに少し肌寒く、秋のけはいです。あんなに採れていた夏野菜がひとつ、またひとつとなくなってゆくのは寂しいですが、さすがにもう十分にいただきました。秋一番に取れた葉物をみそ汁に入れて、フーフーと食べていると夏ばてぎみの胃袋がほっとするようです。

秋野菜は、まず小松菜などの葉物が採れだします。続いて小カブやホウレンソウも出てきます。根菜類は、ジャガイモを堀り終わって倉庫に積み上げたところです。次にサツマイモとサトイモ。この二つは暑いのが好きなので、今年はちゃんとできているか心配です。最後にゴボウと山イモ。霜が降りて葉っぱが枯れてから掘り出します。それから豆類の収穫。インゲン豆、小豆、大豆など。さやをもいで、あるいは茎ごと刈り取ってから日に当てて干し、たたいてさやから出し、手回しのとうみで風選別するという具合です。

収穫といえば稲刈りもあります。お米は自家用に1反5セ(450坪)ほど作っているだけです。スーパーにいけば、お米なんて10キロ3000円くらいから売っていますよね。お金にすればたいしたことはない、というより春からの代かき、田植え、草取りそして毎日の水管理と、かかった労力にまったく見合っていません。お金に換算してはいけないということでしょうか。今の世の中、何でもお金に換算してしまいがちですが、特に食べるものに関しては経済性ばかりを追求すると、ますます自給率が下がり、安全性もないがしろにされてしまいます。ともかく、家族が一年間食べる主食の収穫というのは秋のメーンイベントという感じです。今年は残念ながら、やや不作のようですが。

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地方の野菜と赤カブ漬け

今年の夏、飛騨高山へ日帰りで行ったのですが、そこで食べた赤カブ漬けがおいしかった。
赤カブ漬けは高山の名物だそうです。どこのお土産やさんに行っても、各メーカーの様々な種類のものがおいてありました。独特の酸味があり、これは本来、塩と砂糖と米ヌカだけで漬け込んだものが、時間とともに乳酸発酵したものだそうです。私は個人的に酢と砂糖の「甘酢あじ」は嫌いなのですが、乳酸発酵した酸っぱさは大好きです。家で漬けた野沢菜漬けも、一冬越して春先になってくると少しづつ酸っぱくなってきます。子供の頃からそんなものを食べさせられてきたせいでしようか。京都のすぐき漬けもおいしいですね。そういうわけで、今年は少しだけ赤カブのタネをまきました。自分で漬けてみようというワケです。今ちょうど芽が出たところです。どうなることやら楽しみです。

今、野菜は大きな種苗メーカーのF1品種が中心で、全国どこへ行っても同じ種類のものが作られるようになってきました。しかし、それぞれの地方には、多様な独特の品種が受けつがれ、残っているのです。大根やカブの種類の多さはおどろくばかりだ。赤カブでは、山形のあつみ温海カブや木曽の開田カブ、飛騨紅カブなどいろいろある。ナスもたとえば、ナスどころの新潟などでは、小ナスの漬物用のものや、焼きナス専用のその名も「ヤキナス」という品種、「白ナス」といううす緑色のナスもある。残念ながら、経済的に合わないという理由ですたれつつあるのが多いようですが…。確かに毎年良い種を選び、自分で種をとり続けてゆくのは手間のかかる、技術もいる大変な作業です。また食生活が変わってくれば、なくなってゆく野菜があって当然かもしれませんが、食べ方まで含めて生きてゆく知恵として長年伝えられてきたものは大切にしたいと思うのです。

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お天気と作物

百姓はお天気の話ばかりですが、今年の梅雨は長かったですね。久しぶりにお日様が出て、「やれやれ、やっと梅雨明けか」と思ったら、週間予報はまたくもりや雨マーク。今年の夏は冷夏なのでしょうか。そういえば、去年はまた記録的な暑い夏でしたよね。観測史上最高とか最低とか、最近はそんな話ばかり聞く気がします。お天気ってそんなものなのでしょうか。それとも、地球の温暖化やオゾン層の破壊とか何か重篤な原因があるのでしょうか。

一般に作物は、雨の多い年は病気が出て、日照りの年は虫(害虫)が多いといいます。今年は確かに病気が多いようです。ジャガイモの葉が枯れるのがいつもよりずいぶん早かった。これは「エキ病」のせいだ。野菜も生長のさかりを過ぎて体力が落ちてくると多少なりともいろんな病気におかされつつ、最後には枯れてゆくのですが、今回は激発!という感じでした。今年のイモは小さそうです。うどん用の小麦も病気が出て、皆さんにお届けできるかどうか何ともいえません。また、酪農をやっている友人と共同でパン用の小麦も試しに作ってみたのですが、こちらはさらに病気がひどく、刈り取り途中で断念。収穫なしです。気を取り直して、また今年も種まきします。暖地なら梅雨前に刈り取ってしまう小麦も、高冷地では梅雨の晴れ間に刈り取りをしなければいけないので、今年のような天候ではきびしいです。そしてナス。例年なら今ごろ取れているはずなのですが、今年はほとんど枯れてしまいました。多少はお届けできるでしょうか。いったん病気になつてしまうと、もうしてあげることがないのがつらいところです。

しかし、不作には天候のせいだけではなく、必ず何かしら人為的なミスがあります。今年は畑の作物のローテーションが失敗だったようです。反省です。

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野菜の味が決まるのは

今年はどうやら寒い夏のまま秋になにってしまいそうだ。暑いのが好きな野菜は、やはりあまり元気がないようです。今はちょうどほうれん草やカブ、小松菜、大根など秋野菜の種をまく時期なのですが、こう雨ばかり降り続くと、畑に入ることができず、ちょっと困っています。あさって(8/20)からお天気になると天気予報では言ってますが…。

モロコシや枝豆も遅くなりましたが、やっととれ始めました。これからしばらくはお届けできそうです。枝豆というとビール!、夏!、というイメージですが、ほんとうはこれから出るもののほうがおいしいです。作物には早生(わせ)~晩生(おくて)まで、できる早さの違ういろんな品種があるのですが、じっくりと育つ晩生のもののほうが、おいしい品種が多い気がします。

野菜の味が決まるのには、いろんな要素があります。品種の違いもありますが、もっと大きいのは「土」です。ほんとうに肥えたよい土なら、わずかな肥料を補ってあげればスクスクと育ってくれますし、味もおいしい。反対に土がよくなければ、さ
んざん苦労して何とか作っても、あまりおいしくなってくれません。それから、旬のものであること。これはぜったいです。時期はずれのものはどうがんばってもおいしくありません。

ただし、無農薬で作るということは、味を追求することと矛盾することも、実はあります。品種にしても、作りにくい野菜はとくに、味より丈夫さで選ばなくてはなりません。また、病気になってしまって、葉っぱが枯れたり、元気がなくなったとき、農薬をかけたほうが少しはましな味になるだろう、という場合もあります。でも、食べ物はまずは安全であるべきと思うのです。

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