2005年

犯人は誰だ?

今年もまたモロコシ畑にタヌキがやってきた。朝、キュウリを取りに畑に行くと、隣に植えてあるトウモロコシが2、3本倒れている。もしかしてと思い、近づいてみるとやっぱりそうだ。ガリガリとかじったあとがあり、半分ほど皮をむかれたモロコシが転がっている。見ると中の粒はまだ小さくて真っ白だ。「おいおい、まだ早いよー」タヌキも皮をむいただけで一口もかじっていない。一目見てまだ早いと判断したものらしい。毎年、そろそろ取れるかな、と思っていると、ひとあし早くためし取りしてくれるので、収穫時期の目安にはなるのですが…。
 ところで、タヌキ、タヌキと決めつけているが、実際にタヌキがモロコシをもぎ取っている現場を目撃したことはない。それでは証拠不十分ではないか、と言われればまったくそのとおりだ。もしかするとハクビシンかもしれない。何年か前に隣の家の柿の木に登って柿を食べているのを目撃したことがある。白黒まだらの特徴あるお顔なので間違いない。彼らは木のぼりがたいへん得意で甘いものに目がない。あるいはアナグマかもしれない。何年か前に、かなりジャガイモを掘られたことがある。こちらはやはり目撃証拠はないのだが、アナグマというだけあってたいへん上手に、かつパワフルにイモほりをしてくれた。去年はシカにだいぶ食べられたのだが、シカの食べ方は違う。まだ指くらいの太さの、ヤングコーン状態のものを歩きながらパクパク食べてしまう。何せ体は大きくて食べる量は多い。これが一番まいってしまう。それに比べれば毎日少しずつ大きくなるモロコシを、食べごろになるまでじっと待っているタヌキなんて、かわいいものだ。つい待ちきれずにちょっとだけかじってみた気持ちもわからなくはない。とはいえ、食べ始めるとほとんど毎日数本ずつ食べに来る。家族そろってこられると、一日あたりかなりの必要量になる。これも数年前の話ですが、トウモロコシの収穫がすっかり終わって片づけをしているとき、畑のまんなかに「穴」を発見したことがある。深さ30cm長さ1mほどのりっぱな横穴で、タヌキか何かが作ったらしい。昼間はここでお休みして、夜はひたすらトウモロコシを食べて、ひと夏過ごしていたらしいのだ。
毎年今ごろは何やら忙しく、なかなか手が回らないのだが、今年は少し余裕があるようなので、タヌキには悪いけれど、もろこし畑にネットをはろうかなと思っています。動物もみんな大好きなトウモロコシがもうじき取れます。

写真:タヌキ
 去年の暮れ、家の縁側に出没した。普通は昼間、あらわれないが、皮膚病をわずらって弱っていたせいだろう。

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肥料のこと

ほそかわ農園で使っている肥料は牛ふん堆肥、カキガラ、ボカシ肥の3種類です。堆肥は作物にあげるというより、フカフカで微生物いっぱい、元気いっぱいの土にするために「土」にあげるというかんじです。カキガラは名前のとおり、カキの貝殻の粉末です。以前は石灰を使用していたのですが、そのかわりに使っています。ホウレンソウ、トマトなど石灰分を特に必要とする作物にまいてあげます。
 作物にまく、いわゆる「肥料」は3年ほど前からすべて自家製ボカシ肥にしています。ボカシというのは有機質肥料を発酵させたものです。原材料は米ぬかが全体の2/3、ナタネ油の絞ったあとの油カスが1/3、魚カスとカニのこうらの粉末が少々(1/10~1/20くらい)、あとはモミガラです。これらの材料を混ぜ合わせ、水をかけると、今の時期なら数日でたちまち温度が上がってきます。発酵熱で60℃くらいになるのです。そしてなにやら甘酸っぱい、いい匂いがプーンとただよいます。酵素風呂ではありませんが、入ったら気持ちよさそうです。春先、まだ寒いころノラ猫が上に乗って温まっていたこともありました。1日1回まんのうぐわやスコップで切り返し、混ぜます。最初は水分が多く、ずっしりと重いのですが、次第にサラサラになり、温度も下がってきます。これででき上がりです。現在はこういう肥料を500~600kgずつ年に4回作って使っています。ボカシをあげると虫の出かたは安定するし、野菜も甘くおいしくなるような気がします。とはいえ、たとえどんな肥料を使ったとしても、人間の思いどおりに野菜に味付けすることはとうていできません。
「トマトを作る、ジャガイモを作る」という言い方をついしてしまいますが、本当はトマトやジャガイモが自分で育った、と言うほうが正確ですね。でも、だからこそ
野菜っておいしく、慈味なのでしょう。

写真:キュウリの花
ウリ科のカボチャ、ズッキーニ、キュウリなどは、雄花と雌花がある。雌花にはもう小さなキュウリがついている。

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害虫と益虫

梅雨入りしたというのに、よいお天気が続いています。雨ばかりの梅雨も仕事ははかどらないし、いろいろ不都合なことがあるのですが、農業にとってより本質的には雨が降ってくれない方が困るのだな、と思いしらされています。もうこの先どんなに大雨が降ろうと決してお天気に文句はいいませんから…。
「降れば病気、照れば虫」なんて言い方があります。雨の多いときは作物に病気が多く、日照りが続くと虫が多く発生すると言う意味です。どっちにころんでもいいことのない、みもフタもない言い方ですが、基本的にはこのとおりです。今年は今のところ日照り年なのでうちの畑にもアブラムシ、それからキャベツやブロッコリーが大好きなアオムシ、コナガの幼虫、ヨトウムシなどの害虫がやや多いようです。
虫を害虫、益虫と分けるのは、まことに人間の勝手とは思うのですが、畑や田んぼではどうしても植物を食べる、ベジタリアンの虫が害虫、他の虫を食べる肉食の虫が益虫(天敵)となってしまうのです。虫を観察することによる減農薬運をはじめた宇根豊さんによると、害虫、益虫の他に「ただの虫」というのがいるそうです。例えば、田んぼには600種くらいの虫が住んでいるそうですが、害虫あるいは益虫とよばれているのはその10パーセント以下で、後は直接作物に害もしなければ、益もない、人間から見ればいわゆるただの虫だそうです。しかし、このただの虫が益虫のエサになったり、有機物を分解したり、自然のサイクルの中で目には見えなくても大きな役割を持っている、というお話でした。今、「絶滅危惧種」などとよばれる生物が確実に増えているようですが、おそらく生物の種類が多ければ多いほど、人知の及ばないバランスにより、環境は安定するのでしょう。
畑の上空を自在に乱舞して虫を捕まえているツバメの群れ。思わず見とれながら歩いていると、大きなシマヘビとばったり鉢合わせする。田んぼのあぜには、今しっぽが取れたばかりの小さなカエルが無数にはねまわっている(ヤマアカガエルか?)。
水中に目をこらせば、そこには小さな生き物が満ちあふれている。多くの生き物に囲まれているという感覚…それは一種の幸福感です。
イネとウキクサ
次第に増え、ついに全面ウキクサにおおわれた田んぼ。光をさえぎり、水温が上がらないと嫌われるのだが、逆にそのことにより雑草を抑えたり、また水を浄化する働きもあるという

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農業は楽しい!

ごぶさたいたしました。半年ぶりですね。久しぶりすぎて何だか照れくさいです。
やっと野菜のお届け開始となりました。本当はもう少し早くお届けしたかったのですが、このところやや気温が低かったせいか、野菜も今のところゆっくりとそだっているようです。今年はどんな天候になるのやら、そればかりは誰にもわかりませんが、今年もうちの野菜をどうぞよろしくお願いします。
さて、ほそかわ農園は今年で10年目のシーズンになります。10年やってみてあらためて思うこと、それは「農業は楽しい!」ということ。体を動かし、作物を育て、そして育ってゆくのをながめ、収穫し、いただく…。毎年同じことの繰り返しですが、なぜかちっともあきません。かなりおめでたい人間のようです。そして、うちの野菜が食べたいという方に食べていただけるのはありがたいことです。自分がおいしいと思うものをおいしいと思ってもらえる…有機野菜を作り続ける、ささやかなこだわりをわかってもらえる人に出会う、これはとっても幸せなことです。
また同時に農業の奥深さも感じます。トラクターで草一本ないようきれいに耕し、そこで何か一種類だけ作物を育てるというのは、自然からみればとても不安定な状態です。自然にまかせて放っておけば、安定はしても畑にはならない。そのバランスが難しい。植物を相手に思うようにコントロールするのは、本当に難しいです。
今年新しく作っている作物。だいぶ前にキビを作っていたことがありました。今年また雑穀を作ってみたくなり、キビとアワの種をまきました。アワを作るのは初めてなので、どんなものか楽しみです。緑色の大豆、いわゆる「ひたし豆」も少しまきました。それから「高山インゲン」と言う白いインゲン豆、煮豆にするとネットリとしておいしいのですが、これを皆さんに食べていただこうと思い、たくさんまきました。また、ミニトマトを減らして、ミディアムトマトというのを育てています。ゴルフボールくらいのトマトでおいしいそうです。どんなのができるでしょうか。「万願寺甘とう(京野菜でシシトウの大きいの)」もまた作っています。それからパプリカは以前作っていた小さい品種に戻し、赤いのと黄色いのを作っています。ゴボウはここのところもう何年もうまくできたためしがなかったのですが、今年は耕土が深くうまくゆきそうな畑を借りることができたので、種をまきました。太くて柔らかい「下仁田ネギ」も植えました。他にも好奇心にかられて試作しているものが、実はいろいろあります。そしてさらに気持ちのよい季節のせいでしょうか。どこかに出かけるたびに花の苗や種、果樹の苗など、ついつい買い込んでしまい、いったいどこに植えようかと草だらけの庭をながめるこのごろです。

写真:大麦の穂

伊那谷の方に少量の大麦でも押し麦にしてくれる小さい製粉所があると教えてもらい、今年初めて作ってみました。かなり大量に取れそうなのですが、他にはどんな利用法があるのだろうか?

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