2004年

トマトの話

もうひと月近く雨が降りません。降るところではとんでもなく降ってひどいことになっているのに、どうしたことでしょうか。先日ナスに水をかけました。300リットルのタンクで4回、川から運びました。このくらいでは「焼け石に水」という感じで
すが、それでもやらないよりはまし。ナスは水が大好きなので、今まで乾ききっていた分、ちょっとの水でも喜んでくれたようではありました。わが家だけのジンクスとして「かん水すると雨が降る」というのがあります。ちっとも雨が降らないので、しょうがないなとやっと重い腰をあげ畑に水をかけると、次の日あたりザーっと雨が降って、はいご苦労さんとなるはずなのですが、今回はどうもダメみたい。何とかひと雨ほしいものです。
一方、今年のトマトは元気いっぱいです。トマトは雨が大嫌い。雨にあたると病気になりやすく、実が割れたりもします。反対に乾燥するのはへっちゃら。もともとアンデス高地の乾燥地帯生まれです。今、一番下の房から赤くなり始めたところです。雨が少ないせいか実が小さめですが、その分味が濃いようです。
トマトは3月半ばにタネをまきます。2ヶ月弱ポットで育ててから、畑に植えつけ、支柱を立ててしばりつけます。トマトは本来、ずるずると地面をはいながら伸びてゆく植物なのですが、それではいろんな作業がしにくいので、縦に伸びてもらうのです。次に雨がかからないように、パイプとビニールで屋根をつけます。野菜の中でも手間のかかるもののひとつです。そして、すべての葉っぱのつけねから、次々とわき芽が出てくるので、摘みとります。放っておくとジャングルのようになり、手がつけられなくなります。一つ一つわき芽を摘んでいると手がまっ黄色になって、石鹸で洗ってもなかなか取れません。また、支柱にもこまめにしばりつけないと、地面に降りてはっていってしまいます。そうこうして初めてできたトマトを畑でつまみ食いするのは、毎年のことですがうれしいものです。トマトだけは一個たりとも無駄にしたくないと思ってしまいます。今年のトマトはどうでしょうか。

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お百姓はお天気しだい

暑い日が続いています。標高1000mの土地に住んでいて暑いなどと言っては怒られそうですが、畑に日陰はないし、何かしら体を動かすことになるので、今週はほんとうによく汗が出ました。今、一年間で最も体重が減る時期です。毎年冬と夏では5~
6kg違うのですが、今年は特に減っているみたいです。私の体重もお天気次第といったところです。とにかく農業はダイエットに最適。好きなだけ食べても、飲んでもやせられます(ビールがうまい!)。
そうは言っても、ここでは暑すぎて作物が弱ってしまうようなことはありません。最高気温はどんなに暑くても30℃をちょっとこえるくらい。そして夜から明け方にかけて10度代まですーと下がります。今年植えた野菜もおおむね元気に育っているようです。作物はお天気次第なので、ついつい雨が多いとか、ちっとも降らないとか、暑い、寒いと文句を言いたくなるのですが、日本は気候に恵まれたところだと思います。どこの土地でも放っておけば、あっという間に草がボーボー生え、やがて木生
え、林になってしまう。こういうところの方が、世界ではまれなようですね。
近所のお百姓に道で会ったりすると、まずはお天気の話になるのですが、とくにお年よりなど、どんな気候のときでも落ち着いたものです。そうだな、お天気に文句を言ってもしょうがないと私も反省させられるのです。
今、野菜のトップをきってキュウリがたくさんとれています。今お届けしているのは「さつきみどり」というという品種です。8月ごろには「バテシラズ」というのに選手交代します(キュウリは2回まきます)。この「バテシラズ」もとってもおいしいキュウリです。キュウリ、ズッキーニのあとはインゲンが出てきます。「モロッコインゲン」という品種です。インゲンはいろいろ作りましたが、今のところこれが一番おいしいと思います。インゲンは4回に分けて順次まいてゆき、夏中食べられるようにしています。そのあとはナス、そしてトマトの登場です。ナスは「築陽」トマトは「麗夏」というのを作っています。インゲンやキュウリのように若い実を食べるものは、出始めが最もおいしく感じますが、トマトのように熟した実を食べるものは、とれ始めてしばらくしてから、次第に味がのっておいしくなってきます。どうぞご期待ください。

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野菜の健康管理

6月29日台風が去って、畑の水分がちょうど良くなったのをみはからって人参のタネをまきました。これは、10~12月にお届けするものです。同じく、秋から冬にかけてお届けするキャベツ類も6月中にはタネをまきます。いろんな野菜をお届けできるようにシーズンを通じて、常に何かのタネをまいているのですが、これからしばらくはタネまきも一段落です。かわって畑の管理作業が増えてきます。
まずは、除草―草取りです。「草さえ生えてこなければ畑なんていくらでも作れるのに…」と、つい思ってしまいますが、もちろんそんな都合の良い話はありません。それに、畑によって生えてくる草は違うのですが、自然農法などの考え方では、その土地を肥やすのに最も適した草が、生えるのだといいます。うちにも1か所スギナがびっしりと生えてくる畑があります。スギナはやせ地に生え、地中深くから様々なミネラルなどを吸い出して、地表を豊かにし、そして土が肥えてくると自然に少なくなってゆき、他の草にかわってゆくのだそうです。このスギナ畑をどうやってよい畑にしてゆくのかは、しばらく実験が続きそうです。ともあれ、この時期草の育つ早さは、毎年のこととは言え、驚くばかりです。放っておけば間違いなく、草が野菜に勝ってしまうので、少し手を貸してあげなくてはならないのです。
他には、追肥といいますが、野菜のすがたをよく見て、栄養状態が良くないようなら、肥料をあげます。この見きわめが、何度やってもむずかしいものです。肥料が多すぎて、太りすぎてしまうと、病気にかかりやすくなります。害虫にも好まれます。
わが家には「作物病害虫辞典」というぶ厚い本がありますが、野菜にも実にいろんな病気があります。反対に、肥料が少なすぎたり、あるいは土がやせていると、収穫が少ないですし、また、栄養失調状態になるとかかる病気もあります。
野菜が芽を出し、生長し、自立し、実をつけ、やがて老いてゆく…その一生を1シーズンのうちに見とどけるわけですが、管理がうまくゆけば、そして土がよければ寿命も長く、病気も少なく、美しく老いてゆきます。老境に達した時に違いがいちばんはっきりと出てしまうのです。人間もいっしょでしょうか。

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ことしも一年よろしくお願いいたします。

また、皆さんに何とか1回目の野菜をお届けすることができてほっとしています。今年も、安全でおいしい野菜を作ります。よろしくうちの畑におつきあい下さい。

畑には「はざかい期」というものがあります。作物がとれない時期のことです。冬は寒いので、もちろん何もとれないのですが、家の中のムロなどに大根、人参、ジャガイモ、キャベツ、白菜、長いも、カボチャなど、どっさり蓄えておいて少しづつ出してきては食べます。ところが、春になり、だんだん暖かくなるにつれ、貯蔵しておいた野菜は、傷んできます。だんだん味も落ちてきますし、いいかげん飽きてもきます。そして、最後には腐ってしまいます。一方、冬越しの葉物はとうが立って花が咲き、畑に一番の種はまいても、まだ大きくなっていないこの1ヶ月くらいが1年で最も野菜のない「はざかい期」です。この季節はちょうど山菜のとれる時期です。わが家でもフキノトウから始まって、ギョウジャニンニク、ウド、フキ、コーレ(ギボウシの若芽)、三つ葉、タラの芽、ミョウガタケ、コシアブラなどで何とか食いつなぎ、やっと6月に入ると、畑のものもできてくるというぐあいである。野菜セットも、最初はまだボツボツというかんじで、育ちの早い葉物類や間引き菜などが中心で種類も少ないです。じっくりとおつきあい下さい。

ほそかわ農園の野菜作りの一番大切な約束は、農薬、化学肥料を一切使わないということです。これだけはなんとか守って8年たちました。すると、不思議なことにというか、当然というべきか、野菜はだいたいにおいておいしくなってくれます。そして、自然と旬にしかできなくなるのです。例えば、真冬にビニールハウスで暖房をたきながら、無農薬でキュウリを作ることは不可能でないとしても、至難のわざです。一方、家庭菜園をされる方ならよくお分かりのことだと思いますが、キュウリに適した季節に育てれば、何もしなくてもスクスク育ってしまうのです。そして、もちろんこっちの方がおいしいに決まっています。ただ、旬といえぱ聞こえはよいのですが、それは欲しい物だけを選べない!同じものばかり続く!いちどにどっさりできてしまう!ということもあるわけですが…。

テレビなどを見ていると、「この野菜はこんな栄養があって体に良い。これを毎日1ケ食べましょう!」などと毎日毎日新しい知識を教えてくれます。けれど今なにを食べるべきかということは、季節と畑にきくのが一番ではないかと思うのです。

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