菜園たより

みどりの親指

畑づくり、野菜づくりには作っている人の性格がよく出ます。長野県内で、同じく有機農業をしている人の畑を見学する機会が年に何回かあります。おおらかな人、あるいはおおざっぱな人、そして几帳面な人と畑の様子、作物の姿、野菜の味までおどろくほど違います。そして一種の才能でしょうか、英語で「Green thumb(みどりの親指)を持っている」と言って植物を育てるのが生まれつき上手な人と、なぜだかどうしても下手な人がいるような気がします。同じ生き物とは言っても、植物と人間とは生きてゆくリズムがまったく違うとつくづく感じます。もちろん、何もしゃべってはくれないし、いったいこの作物はもっと肥料がほしいのか、もういらないか、それとも他に何か気に入らないことがあるのが、「いったいどうしたいのだ!」と聞きたくなることがたびたびあります。

ついでに言いえば、お百姓は一人一人が経営者でもあるわけで、経営センスのある人とない人がやはりいます。一番もうけている人と、そうでない人では2ケタくらい収入が違うみたいです。ただし、どちらがより楽しそうに生活しているかは何ともいえません。それに、あまり経営者としてセンスのある人は、おそらく有機農業などしていないかもしれません。農業は基本的に、お日様と水と土がたよりの「スロー」な営みだからです。

さて、人のことはよく見えても自分のことはわからないものですが、ほそかわ農園の野菜はどうでしょうか。ひとつだけ私が人に勝てると思うのは、「人間は食い物が基本だ」という戦中派の人のような信念。そして野菜を食べるのが好きなこと。食い意地の強さです。おいしい品種があると聞けば、作ってみずにはいられません。そろそろズッキーニやキュウリなどの夏野菜が採れはじめます。だれより私が楽しみです。

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お野菜のお届けが始まりました。

今年も何とか、皆様に第1回目の野菜をお届けすることができました。この時期、暑かったり寒かったりしますが、着実に季節はめぐっているようです。今日は真夏のように暑い1日でした。そういえば梅雨入り直前の頃、みょうに暑い日がありますよね。

 さて、早いものでほそかわ農園としてこの地で野菜を作りはじめて、今年で8年目になります。ほそかわ農園の野菜作りには、これだけはぜったい守るという約束がひとつあります。それは「農薬と化学肥料を一切使わない」ということです。安心して食べられるということが、食べ物に求められる第一の条件と思うからです。そしてこの「やくそく」をかたくなに守り続けていると、畑の野菜がいろんなことを教えてくれます。季節はずれに作ろうとすればさんざん虫に食われたり、いろんな病気になったりします。農薬にたよらずに栽培すると、野菜がみずから旬を、一番おいしい時期を教えてくれるのです。ただ、無農薬野菜にも弱点があります。それは野菜の中に虫が入っている可能性があること。仕分けの時に気をつけて、できるだけ取り除くようにはしていますが、「当たり」を引いた方はどうかお許しください。

 今の農作業…5月下旬から6月の始めに苗を植えるもの、種をまくものが集中するのでひたすら植えて、まいてばかり。ようやくひととおり終わって畑には小さな芽が出そろったところ。そろそろ草が伸びてきた。今度は草取りと土手の草刈だ。 

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6月からの野菜出荷に向けて、ただいま準備中!

ここ、標高約千メートルの我が家のあたりでは、春はとてもあわただしく、あっという間に季節がすすんでゆきます。今年は春先やや寒い日が続いたのですが、暖かくなりはじめたと思ったら、梅と桜が同時に咲き、ツバメも南の国からやってきて巣づくりに飛び回っています。

農作業のほうも、春先はにわかに大忙しになります。最近は朝、空が明るくなれば(5時ころ)起きて、暗くなれば寝る(とはいっても10時ころ)という生活。起きるとまず、苗の様子が気になるの で、ビニールハウスへ行きます。ハウスの中はいろんな苗でいっぱいです。夜間苗の保温のためにかけておいたマットを取り、川につないだポンプをまわして水をかけます。温度管理と水のやりかげんがとてもむずかしいのですが、日一日と生長してゆく苗を見るのはとても楽しみです。ちなみに苗の名前をあげれば、トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、ししとう、パプリカ、とうがらし、きゅうり、かぼちゃ、ズッキーニ、ゴーヤ、ゆうがお、キャベツ、レタス、ブロッコリー、サラダ菜、セロリ、水菜、チンゲンサイ、ルバーブなど。それから、ムスクラン(数種類の香草がまざったもので、摘み取ってサラダに使う)というのを試作中です。畑はトラクターで耕し、肥料をまいて、順番に苗を定植してゆきます。田んぼは田植えの準備中。苗代の苗もすくすく育っています。さらに、ビニールハウスを新たに2棟建てている最中です。

今年から両親にも手伝ってもらえるようになり、畑に十分手をかけて気持ちよく野菜作りができるようになると思います。3歳の長男も父のあとをついてまわり、一人前にお手伝いしたつもりでいます。そんなわけで、去年よりたくさんの種類の野菜を、おいしく食べていただけるようがんばっています。今年もよろしくお願いいたします。

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冬の菜っ葉

いよいよ寒くなってきました。朝、温度計を見るとマイナス5、6度になっています。まだ雪にはなりませんが、一面真っ白な霜です。ほうれん草やターサイがぺったりと地面にはりついて寒さに耐えています。特にターサイはまるで座布団のよう。初めて見た方は、これは何?とビックリされるのではないでしょうか。夏にターサイを作ると、まったく違う小松菜のような立った形になります。同じタネからできたものとは思えません。味と栄養はもちろん、冬のほうが上。ターサイ、小松菜、ほうれん草などの菜っ葉は寒さにあたってこその野菜です。今年の菜園たよりは今回でおしまいです。今年も一年ありがとうございました。

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干し柿作り

うちの庭には渋柿の木が6本あリます。ずっと昔、ばあちゃんが植えたものだそうです。20キロ入りのコンテナに4,5ケースから多い年には10ケース近くも取れます。一部はへたを焼酎にひたして渋抜きして食べ、残りは、毎年11月上旬に干し柿作りをします。柿の実をもぎ、皮をむき、ひもでつないで軒先につるす。量が多いだけに、結構手間がかかりますが、軒は一面干し柿のすだれ状でなかなかみごとなものです。こうして作った干し柿は、12月半ばくらいから食べられるようになり、冬中の我が家のおやつになります。市販のものよりかたいけれど、凝縮された柿の甘みが何ともおいしく、子供も大喜びでほおばります。

干し柿作りのように、うちではお金にならない趣味的な仕事が結構たくさんあります。別の機会に紹介したいと思いますが、梅干し、たくあん、野沢菜漬け、干しいも、切干大根、味噌、どぶろく、自家用の果物、きのこ作りなどなど。収入は少ないけれど、何でも自分で作り、できるだけお金を使わない時自給自足的暮らしをしています。と言いたいところですが、買いたいものはいろいろあるし、もっと現金収入を増やさなければいけないのが現実です。

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小麦の話

我が家はみんな小麦が好きです。1日1回はめん類が食べたい。長いものなら何でも大好き。しかも別腹。パン、お好み焼き、お焼きも大好き。手打ちで作るほうとうは、寒い冬には欠かせない料理です。

食べるだけではなく、青々とした小麦の穂が風になびいているのを見るのはとてもきれいで、作るのも楽しい。このあたりでは、小麦の種は9月中旬から10月半ばくらいにまきます。10センチくらいに伸びた小麦はそのまま冬を越します。春になってから真っ先に青々と伸びだし、7月の1週目か2週目に収穫になります。収穫時期がちょうど梅雨どきで、しかも他の畑仕事が忙しい時期なので大変だったのですが、今年から中古のコンバイン(脱穀機)を安く手に入れることができ、収穫が楽になりました。

ところで、日本のコムギは90%が輸入。そして、世界で最もパン作りに適したコムギの一番品質の良いものだけをカナダとアメリカから輸入しています。めん用にはオーストラリアから最もめんに適したコムギをもってきているそうです。これらが私たちがよく食べているうどんやパンになるのです。国産小麦でパンを焼いたことのある方にはその違いがよくわかると思いますが、売っているパンってコマーシャルではありませんがフカフカ、しっとり、もっちり…。でも、日本の小麦も味わい深く、本当はおいしいんですよ。ヨーロッパの国々のそれぞれの地方に、その土地の麦を使った様々なパンがあるように、日本にも日本のムギを使ったものがあればよいなと思うのですが。

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これからの仕事

ぼつぼつ薪ストーブを焚き始めました。このところ暖かい日が続き、このあたりでも10月20日を過ぎて、まだ初霜が降りていません。といっているうち、すぐにガツンと来るはずですが…。畑仕事もようやく一段落といったところです。仕事がはかどったというのではなく、寒さで雑草の生長が止まり、来年まで草取りおよび草刈り作業をしなくてもよくなったというわけです。ただし、草ボーボーにしてしまった畑は、また来年こぼれた種から何百倍にもなって草が生えてきます。

これからする仕事としては、今は秋野菜の一番おいしい時なので、皆さんにたっぷりとお届けするということ。また、近日中にタマネギの苗を定植するのですが、それが終われば今年の種まきや定植はすべて終わりです。あとは畑を順に片づけて、堆肥をまいたり、えん麦やライ麦などの緑肥作物をまいておきます。そして大豆やエゴマの収穫。ネギや大根、白菜、大カブなども、本当に寒くなる前に収穫してかこいます。
そういえば、今年はこの辺一帯イノシシに荒らされて、近所のおばあさんもせっかく作ったジャガイモとカボチャを大部分食われてしまったそうです。ジャガイモ30キロくらい、カボチャ30個くらい分けてほしいと頼まれました。この時代、どんな田舎でもスーパーに行けば、いつでも新鮮なものが安く手に入ります。何もそんな大量に家に蓄えなくてもよいのではと思うのですが、長年きびしい冬を乗り越えてきた人の習慣というか、ほとんど本能のような、そんな気持ちが最近は何だかとてもよくわかる気がするのです。

話がそれましたが、あとはハウスや倉庫を建てたりの大工仕事。来年の床土作り、たくあんや野沢菜をつけたり…と、もうしばらくは何やら農作業の日々です。

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秋冬野菜の言いわけ

今年の秋冬野菜は不作です。ほそかわ農園として野菜を作り始めて今年で7年目になるのですが、最もできが悪い。 がっかりです。けれどもこれは天候のせいではありません。管理不十分。手が回らず。自分のせいです。
キャベツは苗を畑に植えるのが遅れました。10日くらい遅れてしまったでしょうか。もういけません。 ケールのように葉っぱが広がったままで、青々としてとっても元気そうなのですが、丸く結球してくれないのです。 カブや大根、白菜も遅れそうです。それから長ネギ。長ネギは草に弱い。トウモロコシなんかは草には強く、 背が高くなるし肥料をすう力も強く、草だらけにしておいても、雑草に負けじとぐんぐん大きくなり、けっこう収穫できる。 大豆やジャガイモなんかも、最初何回か草取りをしてあげれば、次第に葉がしげってきて光をさえぎり、 ある程度大きくなればもう草は生えてこない。ところがネギはいくら大きくなっても、あのとおり棒のような姿なので、 最後まで草に勝つということがないのです。そして日照りには強いかわりに雨はキライなので、 草だらけの中に放っておくとヒョロヒョロになり、次には溶けてなくなってしまう。本当に今年はいけませんでした。

近所の百姓のとしょーり(ご老人)が何げなく、かつゆっくりと、しかし確実に 行っている作業のすべてがひとつの技術なのだとあらためて思うこのごろです。

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カボチャごろごろ

○ 今年は8月の少雨がたたって、秋の葉物は今ひとつです。そのかわりというか、 カボチャが例年になく豊作で、軽トラック3台分も収穫できました。
前にたよりで紹介した「へそカボチャ」もたくさん取れたのですが、 残念ながら「へそ」の盛り上がり度が今ひとつ、小さな出べそカボチャといったところです。
味の方は去年食べたのに比べると、甘みはあるけれどホクホク感が強く、 煮物にはもう少し粘質のほうが良いようです。きっと去年とっておいた種の時点で、 すでに他の品種と交雑していたのでしょう。

去年、たよりで遺伝子組み替えトウモロコシの話をしましたね。 今年は遺伝子組み替えの心配のないトウモロコシの種を少量ずつ分けてもらい、 試しに作ってみました。ひとつは「20年前のスイートコーン」といわれるもので、 今のものより甘みは落ちるが、まずまず食べられるものでした。
もうひとつは「もちモロコシ」といわれるもので、甘みは少なく、 歯にねちゃねちゃくっつく感じではっきり言っておいしくない。 では、甘みを多少我慢しても「20年前のスイートコーン」なら絶対に安全かというと、 必ずしもそうではないのです。
遺伝子組み替え問題の恐ろしいところは、 数百メートル離れたところでも飼料用のトウモロコシを作っている畑があれば交雑する可能性があり、 それは防ぎようがないのです。本当に困ったことになりました。とりあえず、 最新の情報に耳を傾けつつ、より良い方向を手探りしているというのが現状です。

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畑もったいないトマト

トマトは出荷できないキズものが出やすい野菜です。えき病やウイルス病といっ た病気にかかりやすいし、雨が降ると皮がはじけて、すぐひび割れができてしまう。 また、ヨトウムシやタバコガなどのイモムシにねらわれやすい。ナスやピーマンなど はあまり食われないのに。生で食べるにはやはりトマトのほうがおいしいのだろう か。
そういうわけで、皆さんに野菜をお届けするごとに、くずトマトがドサッと残っ てしまう。もったいないので、保存用のトマトピューレのほか、ラタトウュ、ミネス トローネ、スパゲティー、ピザ…あらゆるトマト料理を作りました。でも何といって も、そのまま切って大きなお皿にドカンとのせていただくのがおいしい!毎日毎日… 飽きもせず。もう来年の夏まで心残りはないです。
旬の野菜をいただくというのは、 本当に“ばっかり食”なんですね。でも1年を通して栄養のバランスが取れているの だと思います。

田んぼが黄色くなりました。ああ、夏が終わってゆく。

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