野菜の味

野菜の味っていったい何によって決まるのでしょう。
 まずは何といっても旬のものがおいしいのだが…たとえば、カブは、は春と秋それぞれ数回ずつに分けて種をまく。 春一番のは、なるべく早くお届けしたいので、まだ寒いうちに少し無理して早めにまく。 するとどうしても虫がつきやすく、きれいなカブにならないし、味ももうひとつ。その次あたりが、もっともおいしい。 そして7月に入り徐々に暑くなってゆくのにつれて、辛みがでたり、少しずつ味がおちてくる。 収穫のときは、たいてい引き抜いたカブの土をシャツのすそでふき、試食と言うか、つまみぐいをするのだが、毎回味が違う。 トウモロコシも夏から秋にかけて、なるべくコンスタントにとれるよう早生と晩生の品種を使い、数回にわけて種まきする。 実の先についた毛が茶色くなり、先のほうまでふくらんでくると食べごろだ。こちらも畑で生のままかじって味見しているが、本当においしい時期は、 それぞれ、せいぜい1週間くらいしかない。一言で旬といってもなかなか微妙だ。
 それからその土地の気候風土も大きく作用する。標高1000mのこのあたりでは、強い日差しと、昼と夜との大きい温度差によっておいしい野菜ができる。 しかしもう少し八ヶ岳を登っていった、標高1400mあたりで畑を作っている知人によると、そこで取れたジャガイモやトマトは、それはそれはうまいそうだ。 そうかもしれない。なにせ、ジャガイモやトマトはアンデスの高地が原産地。野菜によって好きな気候はさまざまなのだ。
 また、どんなふうに野菜を販売するかということも、実は味に影響する。スーパーや流通業者に出荷となると、どうしても規格や見た目が大事になる。 その点直接、食べていただく方一軒一軒にお届けしていると、安心、味が最優先。食いしん坊の私としても好都合なのだ。

写真:垂れ下がってきた粟の穂
秋は穀物が実る季節だ。すずめに食べつくされる前に収穫しなければいけない。粟の
穂は形がかわいいので、ドライフラワーにして飾っている。