ごみの問題

cimg3268.jpg○もともと環境問題には関心があったが、自分で気をつけるくらいで、特に社会に働きかけようとまでは思っていなかった。ところが3年ほど前、家の近くにごみの焼却灰を処理する施設の計画があることを知って状況は一変した。焼却灰を埋め立てる場所が満杯になるため、灰を高温で溶かしてガラス状の物質に固める「灰溶融炉」という施設を作るという。その施設は全国で爆発事故が起きているらしいし、ダイオキシンや重金属類などの有害物質の放出により、空気も水も土地も汚染されてしまう。また、高額な建設費と維持管理費で町の財政を圧迫し、大量の灯油や電気を使うためCO2を大量に排出する環境に優しくない施設なのだ。
○とにかく自分の子供たちと田畑を守るため、反対運動を始めなければならない。人前で話すのなんて大の苦手の私たちだが、少しでも感心のある人に話をしたり、当時の田中康夫知事に直訴したりもした。最初はほんの数人からのスタートだったが、チラシ配り、講演会、デモ行進、署名活動などを続けていくうち、仲間が数十人、数百人へとひろがってゆく。その仲間の一人一人が実に個性的で、それぞれの得意分野で素晴らしい活躍をしてくださった。その時に知り合った方たちは今でも私たちの大切な財産だ。動き出したら止まらない公共事業と言われているように、もうだめかと何度も絶望的になりながらも、ついに今年の1月、事実上の白紙撤回となった。3年間の努力が実ってほっとした半面、自分さえよければいいのか…という後ろめたさが当初からずっとつきまとっていた。
○一部地域の人たちだけに迷惑施設を押し付けない方法はないのでしょうか。その解決策はただひとつ、ごみをできる限り減らすこと。先日、ここ富士見町と隣の原村、茅野市の3市町村で、今後のごみ処理をどうしてゆくかという検討委員会が立ち上がった。 その委員に一般公募枠から、一緒に運動してきた仲間が数名加わってくださった。他にも大勢の人たちが、ごみ減量に向けて知恵を出し合っている。
○ごみを減らしたいと誰もが願っているが、それを実現するのは並大抵のことではない。住民ひとりひとりが努力するのはもちろん、ごみを減らすと得をする仕組みを考えださなくてはいけない。それだけではなく、企業やお店、旅館などから出る、いわゆる事業系のごみもかなりの割合を占めているので、そのごみ料金を大幅にアップすることも不可欠だ。ちなみにゼロウェイスト(ごみゼロ)宣言をした徳島県の上勝町も、きっかけはごみの捨て場がない、お金もないというぎりぎりのところからの選択だった。 逆に大きな焼却炉を作った自治体は、莫大な借金が生じ、さらに燃やすごみが足りなくて困っているのだそうだ。その上勝町の町長は「ごみを減らすのは簡単だ。すべての商品をデポジット制にして料金に上乗せし、容器等を返却するとお金が返ってくるようなしくみにすればいい。」とおっしゃっている。企業の利益を最優先するわが国では、家電リサイクル法ですら、デポジット制にできていないのが情けない。
○今の子供たちが大人になったとき、もし住んでいる地域が汚染にまみれ、自治体は借金まみれだったら、きっと誰も故郷に住みたいとは思わないだろう。今回の運動を通じて、みんなで声を上げてゆけば地域を変えることができる、ということを多くの人たちに教えていただいた。ここ富士見町に暮らしていることを感謝し、いつまでも自然豊かで暮らしやすい地域であることを願っている。