2006年8月

夏の生活

標高1000mの高原にも夏がきた。人に会えば、みなあいさつがわりに「暑いなあー」と言う。たしかに暑い。それに高原の夏は、気温以上に日差しが強い。 ジリジリする。しかし誰も嫌がっているふうではない。むしろうれしそうだ。昼も夜も半袖で過ごせる季節。畑が一年中で一番にぎやかな季節。貴重な一瞬の夏だ。
 トマトが赤くなる速さは、気温しだい。寒いとゆっくりだが、暑くなるにつれて、どんどん早くなってくる。取っても取ってもたちまち赤くなる。 キュウリの生育も暑さしだい。これだけ暑いとたちまち大きくなる。そして最初、大きくなるのが待ちどうしかったナスやピーマンも、花を咲かせ実をつけ、 さらに枝を伸ばし、枝分かれし、またそれぞれ花を咲かせ実をつけさらに枝を伸ばし枝分かれし…きりがない。 こうなってくると、畑で働く人の生活も変化する。朝、明るくなるのと同時に収穫スタート。 トマトをもぎ、キュウリを取り、ナスやピーマンを取りと、毎日ひたすら収穫。毎日どっさり取れる。 そのうちふと気が付くと、せっかくきれいに除草したニンジン畑が、ネギ畑が、またすっかり草だらけだ。たいへん、草取り、草取り…、 それから秋の準備、キャベツを植え、白菜を植え、ホウレンソウをまいて…。しだいにめまぐるしいと言うか、わたしが野菜にこき使われているような気さえしてくる。 わが家のささやかな家庭菜園である小さなイチゴ畑は、どうしても手が回らず、去年同様またすっかり草に覆われてしまった。
 しかし、そうこうするうち、お盆を過ぎてしばらくすると、急に涼しい風がふいてくる。もう萩が、オミナエシが咲いている。稲穂がかしいでくる。 ほんとうに一瞬の夏なのだ。

写真:モロッコインゲンのトンネル
今年はここの畑で作業中にギンヤンマとオオムラサキを見かけた。どちらも今では希少な種だ。

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ニンジンの草取り

先日の大雨でうちの畑も田んぼのようになった。幸い大きな被害もなかったが、野菜にとってはかなりのストレスではあったので、この後病気などに要注意だ。 雨が続いている間は、ずぶ、ずぶと長靴をひきぬきながら野菜の収穫をした。 トマトやキュウリ、カボチャなどの果菜類は、うねまに草を生やして刈り込みながら栽培しているのだが、この草生の部分は、こんな時でも何とか歩くことができた。 土がむきだしの畑は川のように水が流れ土を押し流していったが、草が生えていると土をしっかりつかんでくれる。 大雨には威力を発揮した草生栽培だが、しかし何の野菜にも取り入れられるというわけではない。中には徹底的に草取りをしなくてはならないものもある。
ニンジンは草とりに手のかかる野菜だ。5寸ニンジンで、種まきから収穫まで100日くらいかかるのだが、まず種まきしてもなかなか芽がでない。 のんびりしているのだ。その間に雑草が次々芽を出し、ぐんぐん伸びてゆく。「雑草のように」というたとえのとおり彼らはたくましい。 そしてすばやい。一方ニンジンは、ようやく芽をだしたものの、ゆっくりと双葉をひろげ、ゆっくりと小さな本葉を一枚づつのばしている。 今、種まきから1ヶ月たったところだが、ようやく10cmくらいになったところだ。これで雑草にかてるわけがないのだ。 かくしてニンジンが芽を出すか出さないうちからせっせと草取りをしなくてはならない。秋冬にお届けするニンジンは量も多いし、ここが草取りの勝負どころという感じだ。 まずは、エンジンつきの管理機、2種類の手押し式の除草器具、3種類の草かきなどの道具を駆使して除草する。 可能な限り、ぎりぎりまで、道具を使うのだが、最低1回は手で取ることになる。 しゃがみこんで、2条づつ草を取り、こみ合ったところは間引きしながらずるずると前進してゆく。 そのうち腰が痛くなってくると、ひざをつく。そのうちに手もついて、四つんばいになっていることもある。通りがかりの人から見ると、 畑の中をはいはいしているおじさんというのは、かなり変な光景かもしれない。「たいへんですね。」とかなんとか声をかけられたこともある。 なにかこう悲惨な労働と思われたようなのだ。当人は、ぜんぜんそんなつもりはないのですが…。ただ、進むスピードの遅さはこたえる。 今年は細長い畑に種まきしたので、うねの長さが70メートルくらいある。しゃがんで見てみると、はるかかなたというかんじだ。 草のはえかたによるが、70メートル進むのに半日くらいかかる。夕方になり後ろをふりかえると、1日かかってこれだけかという思いがこみあげてはくる。 しかし考えようによっては、1日ひたすら草取りをして過ぎてゆくというのは、このあわただしい世の中で、 一種の贅沢かもしれないとも思う…思うことにしておこう。

写真:ニンジン畑
種まきから1ヶ月たったところ

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